社会的正義の問題と向き合った時、 Linさんご自身が納得できるスタンスを得るためにはどんなことが必要なのでしょう?
こんにちは!
心理カウンセラーのリエコです。
今日は「ココロノマルシェ」に寄せられたご相談に回答します。
ココロノマルシェとは|根本裕幸カウンセラーのお弟子たちが回答する無料のお悩み掲示板です。
他人と自分との線引きと、社会的正義の問題
こんにちは。根本さんのブログを愛読しております。今日はいろんな方のご意見をお伺いしたく、こちらに相談をしました。
私は共感性が高く、他人のことまで自分ごととして考えがちで、それは長所でもあり短所でもあると思っています。
いま、職場で法令を逸脱したことが行われていて、結果的に、弱い立場の社外の人が被害を被っているということが起こっています。社内で改革を試みましたが難しそうなので行政に相談しようかと考えています。
以前相談したカウンセラーからは「自分は自分、他人は他人。他人に起こっている問題はその人本人に任せた方がいい」とアドバイスされました。
「弱い立場の女性を助けたいのではなく、過去の自分の辛い経験についてのリベンジがしたいのではないか」とも。
その意見の根拠はよくわかります。嫌な職場に執着せずさっさと辞めればいい、相手を変えようとするのではなく、と、周りの友人も言います。
ただ、女性の地位を向上してきたのは、これまで見て見ぬふりをせずに闘ってきた先輩方のおかげです。「ここで自分が見て見ぬふりをしていいのか」という気持ちと、「確かにこの行動のもとになってるのは自身のリベンジ要素かな」という気持ちが拮抗しています。
ほかにも、社会的正義とは、といったテーマが最近自分の周りによくあらわれてきており(※)、今の私が取り組むべき課題なんだろうなと感じてます。
補足として、今の私自身のプライベートは安定していますが、職場はずっと落ち着かず問題続出の状態です。
共感性の高い私のような人が、こういった問題(特定の人を助けたいのではなく、組織的に行われている不正をどうにかしたい)に対して、どのように自分の感情を整理していったらよいでしょうか。
漠然とした質問ですが、どうぞよろしくお願いします。
(※異動してきた同僚男性が、女性に恐怖を与えた問題行動の前歴(文字通りの前科)があると知り、どう対応するべきか考える必要が出てきました。こちらも可能であれば「どういう心持ちでいるべきか」をお尋ねしたいです。この部分は削除していただいても構いません。)
Linさん(ご相談リンクはこちらです)
Linさん、はじめまして!
心理カウンセラーのリエコです。
困っている人を「見て見ぬふり」できないLinさんが、社会的正義というテーマにおいて、自分の気持ちとどう折り合いをつけるか?
うーん、とても悩ましいテーマですね。。
そもそも、こういった課題を持つ人は、大きなものにも屈せず立ち向かえる「大きなエネルギー」を持っているのだと思います。
その「大きなエネルギ―」に加え、他人のことも自分事に感じてしまう「共感力」をも備えているLinさんは、これまでも周りにとらわれることが多かったのではないでしょうか。
共感性の高い私のような人が、こういった問題(特定の人を助けたいのではなく、組織的に行われている不正をどうにかしたい)に対して、どのように自分の感情を整理していったらよいでしょうか。
他人と自分との境界線を越えて、誰かの苦しみを背負えるパワーがある人は、どこかで線引きができないと生きづらいですよね。
線引きしにくい要因は?
Linさんが「線引き」に困ってしまうのは、どうしてでしょう?
ご相談文から、要因を2つ挙げてみたいと思います。
❶「共感性」の高さ
他人と自分との間に引く「境界線」は、健全で心地よい人間関係を築く上で必須アイテムです。
でも、社会的正義という視点に立った時、「自分」と「弱い立場の人」との間に線を引くことは、相手を見捨てるような感覚になってしまうのかもしれません。
相手の痛みを共感できてしまうからです。
これが「共感性の高さ」の長所の部分ですね。
一方で、誰かに共感できてしまう分だけ、自分のことが置き去りになります。
境界線が曖昧なので、どこまでが自分の感情かわからなくなったり、他人の感情に翻弄されやすくなるのです。
また、感性が豊かな人は、ネガティブな状況において、「全てを感じたら生きづらい」と感情に蓋をしてしまうケースも多いと思います。
Linさんは「自分のことがよくわからない」と感じることはありませんか?
❷「助けてほしい」の気持ち
>社会的正義とは、といったテーマが最近自分の周りによくあらわれてきており、今の私が取り組むべき課題なんだろうなと感じてます。
私も、同じ意見です。
この課題はLinさんに何を伝えたいのでしょう?
もしもカウンセリングの場でしたら、
社会的正義のテーマに「どう取り組むか」ではなく、
社会的正義のテーマが「自分の周りによくあらわれるのはなぜか」というところをみていくと思います。
そこで気にかかったのが、「過去の自分の辛い経験」というワードです。
>「弱い立場の女性を助けたいのではなく、過去の自分の辛い経験についてのリベンジがしたいのではないか」とも。
>「確かにこの行動のもとになってるのは自身のリベンジ要素かな」という気持ちが拮抗しています。
過去のお辛い経験については詳細がわかりませんが、Linさんはここで言われている「弱い立場」に立たされたことがあるのでしょうか。
・大きな流れに巻き込まれてしまった
・抗えない状況に陥ってしまった
・何かを受け入れざるを得なかった
・理不尽な想い
Linさん(もしくは近い方)が過去にそんな状況を経験されたなら、「弱い立場の人」に心を傾けずにいられない理由に納得がいくなと思いました。
相手の痛みがわかってしまうから、スルー出来ないのです。
この問題がLinさんの前によくあらわれるのは、「弱い立場の人」の困りごとを「自分ごと」としてキャッチするから。
それでは「見て見ぬふり」できないし、線引きもしづらいですよね。
それは、Linさんの心の中にまだ「痛み」があると教えてくれています。
「弱い立場の女性を助けたい」のは、あなたの中に「助けてほしい自分」がいるからではないでしょうか。
誰かを助けることで、自分を助けようとしているのかもしれません。
そんな感覚はありませんか?
もしそうだとしたら、
「助けたい」の気持ちの分だけ、Linさんの中には「助けてほしい」があるのかもしれないなと思いました。
「社会的正義」の問題と向き合う
では、Linさんは「社会的正義」の問題にどう向き合っていったらいいのでしょう?
境界線をひく。自分のためにも、相手のためにも。
「弱い立場の人を助けてあげたい」と誰かを思いやる気持ちは、「愛」以外の何ものでもないと、私は考えます。
でも、自分が大丈夫じゃない時に誰かを助けようとする行為は「犠牲」です。
「自分を犠牲にして助けること」って、相手の立場からしてもとても心苦しいことですよね。
愛だけじゃなく、罪悪感を与えることにもなってしまいます。
それだけではありません。
もしもそれが「相手に必要があって起きた問題」だったり、「相手が人生において乗り越えるべき課題」だった場合には、相手の学びや成長の機会を奪うことにもなえます。
誰かを本当の意味で助けたいと思った時、「境界線」は必須なんですね。
また境界線を引くことで、
Linさん自身も「自分の気持ち」とつながりやすくなりますし、
「共感性の高さ」がキャッチした情報から自分を守るツールともなります。
境界線は、
自分と相手との「関係を切るもの」ではなく、
自分と相手との「距離感を適正にするもの」なのです。
自分とつながり、自分を助ける。
社会正義の問題を前にしてとても心苦しいことだとは思いますが、
「まずは自分の問題に取り掛かかること」を私はお勧めしたいです。
もしかしたらLinさんの「頭の中」では決着がついているのかもしれませんが、
「心の中」ではその出来事がまだ終わっていないのではないかと私は思うからです。
具体的には、過去のお辛い経験で傷ついた「Linさんの心」を癒すこと。
あなたの大きなエネルギーを、まずは自分を助けることに注いでみるのはいかがでしょうか。
自分が救われることなく、本当の意味で「誰かを助ける」ことはできないのですから。
自分軸で問題を眺めてみる
「自分の問題」が解決することで、はじめて「誰かの問題」をフラットに眺めることができると、私は考えます。
その視点から「私はどうしたい?」と自分自身に相談し、選択していきます。
ここで、自分とのつながりができていると、
「自分がしたいこと、したくないこと」がわかり、「自分にできることと、できないこと」の仕分けができるようになります。
それは相手に対して冷たくなったのではなく、「助ける」の一択だったLinさんが他の選択肢を持てるようになった成長点です。
その上で、「今の自分にできること」をしていけばいいのだと思います。
もし仮に「助けない」ことを選択したとしても、「その人が自分の力で苦難を乗り越えられますように」と祈ることはできます。
そしてその選択は、自分の意志を尊重できるようになったことのあらわれであり、自分を大事にできるようになったのだ、と捉えていきます。
自分の心を整えてから「相手の問題」に取り組むことで、Linさん自身が納得できる「私はこうしたい」のスタンスを得やすくなるのではないかなと思いました。
*
ざっくりと書きましたが、Linさんにとってかなり大きなテーマだと思います。
これまでLinさんの中にはなかった概念に取り組むことでもあるかもしれません。
ひとりでは難しいと感じたら、ぜひカウンセラーに頼ってくださいね!
この回答が少しでもお力になれましたら幸いです。
心理カウンセラー リエコ